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生命の救済者改め貴石の契約者第7話

掲載しなおしたすぐ下の6話にも書きましたが生命の救済者を貴石の契約者にしました。
いや~、生命の救済者だと救済の魔女でもあるマギカやまどかは連想すれどかずみに行き着かなくね?という理由で。




「終わりだよ!」
槍の一撃がさやかに迫る。
だが杏子の一撃は、次の瞬間にはまったく関係ない地面に突き刺さっていた。
「なっ!?」
「え?」
「ワッツ?」
「ほむらちゃん…」
驚く一同の中、まどかがそれを行なったであろう人物の名前を呟く。
というか何故にリョウは英語?
(2人の位置が入れ替わっている?)
ふとユウがそんなことに気づく。
「何しやがったテメェ!…なっ!?」
問いただそうとする杏子だが、相手はいるはずの場所ではなく背後にいつの間にか移動していた。
一瞬で、ましてや杏子に気づかれることなく移動するなど不可能なはずなのに、である。
「そうか、アンタが噂の魔法少女の方のイレギュラーってやつか。妙な技を使いやがる…」
「またアンタ…邪魔するな!」
と、さやかが斬りかかる。
だが、ほむらはまた一瞬にしてさやかの背後に移動し、腕について円盤をさやかの首にたたきつけた。
「さやかちゃん!?」
「大丈夫、気絶させただけよ」
心配そうな声をあげるまどかに、しれっと答えるほむら。
「気絶させた時点で大丈夫じゃないと思うんだが…」
「何なんだアンタ?一体誰の味方だ?」
さやかを平然と殴り倒したほむらにぽつりと言うユウと警戒しながら問う杏子。
「私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵。貴女はどっちなの?佐倉杏子」
「なっ!?……なんであたしの名前を!?……どこかで会ったか?」
突然名前を言い当てられて動揺する杏子。
キュゥべえとは係わり合いを持っていないらしく、ユウとリョウから伝わったとも思えない。
「さあ、どうかしら」
「……手札がまるで見えないとあっちゃね。今日のところは降りさせてもらうよ」
妙な不気味さを感じた杏子は、
「賢明ね」
ほむらの言葉の後、左右の壁を蹴って上に行きながら立ち去っていった。
「……なんで普通に立ち去らないんだろう?」
「なにを言っているんだマイブラザー!!スタスタ歩いて立ち去ったらなんかあれじゃないか!!」
「あれってなに?」
相変わらず妙なことを言うリョウの言葉に首を傾げたまどかは、ほむらに視線を戻す。
「助けて…くれたの?」
「助けたように見えたのか?」
「いや、一応呼べなくもないぞ。美樹がぶっ飛ばされたのはアイツが悪いし」
まどかの言葉に疑問を浮かべるユウにそう言うリョウ。
一方、ほむらはまどかをジッと見ると、
「貴女は魔法少女に関わり合いを持つべきじゃないと、何度も言ったと思ったけど?」
と言う。
「私は…」
「あなたがなにを願ったところで、なにかも変わりはしない…この世界がそれを証明している」
「え?」
まどかの疑問の言葉に答えず、ほむらはさっさと背を向けた。
「ほむらちゃん…どうして」
『何にせよ、彼女が何かを企んでいるのは確かだ。くれぐれも、気をつけて』
キュゥべえはそう言うと、立ち去るほむらの背中を見つめる。
『暁美ほむら。君は、まさか……』

 魔法少女まどか・かずみ☆マギカ - 貴石の契約者・まどか編

  第7話 こんなの絶対おかしいよ

『これでまた暫くは、大丈夫だ』
初めて倒した魔女から得たグリーフシードによってソウルジェムがきれいになると、キュゥべえはそう言った。
「あー、真っ黒」
浄化したグリーフシードを見てそう言うさやか。
『もう、危険だね。これ以上の穢れを吸ったら、魔女が孵化するかもしれない』
「ええ!?どうしよう!!」
わりとシャレにならないことを言うキュゥべえだが、
『大丈夫、貸して』
そう言って受け取ったグリーフシードを尻尾で器用に自分の背中に向かって刎ね飛ばす。
と思うと、キュゥべえの背中の丸い模様(?)が開きグリーフシードを飲み込んだ。
「きゅっぷい。これでもう安全だ」
「た、食べちゃったの?」
ちょっとひくさやか。
『これもまた、僕の役目の一つだからね』
だがキュゥべえはこともなく言う。
『でも、また次にソウルジェムを浄化するためには、早く新しいグリーフシードを手に入れないと』
「これをキレイにしておくのって、そんなにも大切な事なの?」
きれいに輝くソウルジェムを見つめながら問うさやか。
『佐倉杏子は強かっただろう?余分なグリーフシードがあれば、魔法を出し惜しみせずに、無駄使いすることだって出来る。それが杏子の強みだ』
「だからって、GSの為に他の人を犠牲にするなんて…」
『魔力を使えば使うほど、ソウルジェムには穢れが溜まるんだ。さやか、君がグリーフシードを集められない限り、杏子と戦っても、勝ち目は無いと思っていい』
「はあ…何だかなぁ」
キュゥべえの言葉にため息をつくさやか。
「マミさんだって十分なGSを持ってた訳じゃないんでしょ?でも、ちゃんと戦えてたよね?やっぱあれ?才能の違いとかあるの?」
『確かにそれは事実だね』
「ずるーい!不公平だー!」
『こればっかりは仕方ないよ。杏子は素質がある上にベテランだし』
と、一旦言葉を切るキュゥべえ。
『逆に、全く経験が無くても、才能だけで杏子以上の魔法少女になれる天才だっている』
「え?誰よそれ」
『鹿目まどかさ』
「まどかが?それホント?」
キュゥべえの問い返す。
『ああ、だからもし、どうしても杏子に対抗する戦力が欲しいなら、いっそまどかに頼んでみるのも手だよ。彼女が僕と契約すれば……』
と、キュゥべえは提案するが、
「ううん。ダメ!これは…私の戦いなんだ。あの子を巻き込むわけにはいかない」
ばっさりと切るさやかだった。

『そんなことがあったコンか』
リョウの頭の上で佐倉杏子の話を聞いた九尾はなにかの紙から目を離すこともなくそう言った。
「お前がどこ行っていたんだよ!おかげで俺活躍できなかったじゃないか!!」
『いや、いまのアンタはさやか以下コン。そんなアンタが戦えたとしても大して結果は変わっていなかったんじゃないと思うコンよ』
「そこは気合でなんとかする!」
「アホか…」
ユウは呆れた声でリョウにツッコムと、
「ところで、お前なに見ているのさ?」
先ほどから気になっていたことを聞く。
『ほむほむのカルテコン』
「なに!転校生は四人組なのか!?」
「いや、それはカルテット。「ット」はどこから持ってきたんだよ」
『ほむほむのことを調べていたら、入院していたことがわかったコンから、その病院まで行ってちょっとカルテを失敬してきたコン』
「お前、それ窃盗…」
『これによると心臓病を患っていたみたいコンねぇ』
ユウの呟きも完全無視する九尾。
「お前、わかるのか?」
『当たり前コンよ。妖怪パワー舐めちゃダメコン』
リョウの問いに答えるが、
「いや、むしろなんで妖怪が病院のカルテ理解できるんだよ」
むしろそのことがツッコミたいユウだった。
『妙コンねえ…』
「カルテ読む妖怪狐の姿がな」
『この内容から考えて、ほむほむはまだ薬を飲まなくちゃいけないほどだったコンけど…』
ぺらり。と別のカルテを見る。
『退院する数日前に突然健康体になっているコン。…契約したのはこの辺りコンかねえ…』
「でもキュゥべえは契約した覚えはないって」
『コーン…ほむほむは一体…?』
小首を傾げる九尾。

ユウとリョウと出会ったゲームセンターで、再び杏子はダンスゲーム「Dog Drug Reinforcement」をプレイしていた。
と、彼女の背後に暁美ほむらが現れる。
「よう、今度は何さ」
振り向くことなく声をかける杏子。
「この街を、貴女に預けたい」
「どういう風の吹き回しよ」
ほむらの言葉にダンスをやめることなく言う杏子。
「魔法少女には、貴女みたいな子が相応しいわ。美樹さやかでは務まらない」
「ふん、元よりそのつもりだけどさ。そのさやかって奴、どうする?ほっときゃまた突っかかってくるよ」
「なるべく穏便に済ませたい。貴女は手を出さないで。私が対処する」
「まだ肝心なところを聞いてない」
声が、真剣なものになる。
「アンタ何者だ?一体何が狙いなのさ」
「二週間後、この街にワルプルギスの夜が来る」
「ーーなぜわかる?」
ほむらの言葉に声がさらに低くなる杏子。
「それは秘密。ともかく、そいつさえ倒せたら、私はこの街を出て行くわ。あとは貴女の好きにすればいい」
「ふぅん…。ワルプルギスの夜ね。確かに一人じゃ手強いが、二人がかりなら勝てるかもなぁ」
杏子がそう言ったと同時に、ゲームをクリアした。
得点は満点。
と、同時に振り向くと、
「食うかい?」
そう言って杏子はロッキーの箱をほむらに差し出した。

さやかが杏子に襲われた場所に、まどかたちはいた。
『ダメだ。時間が経ち過ぎている。ゆうべの使い魔を追う手がかりは無さそうだ』
「そう…」
「ねぇ、さやかちゃん」
昨日取り逃がした使い魔の魔力波長を探すさやかにまどかは意を決したように話しかける。
「このまま魔女退治を続けてたら、また昨日の子と会うんじゃないの?」
「まあ、当然そうなるだろうね」
「で、またボコられどぐう!?」
余計なことを言うリョウにさやかの拳が決まる。
「だったらさ、先にあの子ともう一度会って、ちゃんと話をしておくべきじゃないかな?でないと、またいきなり喧嘩の続きになっちゃうよ」
『まどっち、気にしないコンね…』
「あいつスルースキルすごいな」
リョウが殴り飛ばされることも気にせずに話を進めるまどかに感心したように言うユウ。
「喧嘩ねえ。夕べのあれが、まどかにはただの喧嘩に見えたの?」
「…え?」
「確かに、ただボコられてどむう!!?」
また余計なことを言おうとしたリョウにエルボーをくらわすさやか。
「お前…懲りないな」
倒れているリョウにぽつりと言うユウ。
「あれはねえ、正真正銘、殺し合いだったよ。お互いナメてかかってたのは最初だけ。途中からは、アイツも私も本気で相手を終わらせようとしてた」
「いや、向こうは最後までナメていどぶるげふう!!」
『なんとも見事な回し蹴りコン』
リョウを地面に伏せさせたさやかの一撃に感嘆の声をあげる九尾。
「そんなの…尚更ダメだよ……リョウ君に暴力を振るうのも」
慌てた様子で言うまどか。
流石に容認できなくなってきたのか、リョウのことにも触れてあげたが。
「大丈夫だ、ボケとツッコミは一種のスキンシップ。気にする必要はない」
と、倒れたままサムズアップしながらリョウがそう言う。
「……そうなの?」
「自分に聞かれても…」
と、肩をすくめるユウ。
「だから話し合えって?バカ言わないで。相手はグリーフシードの為に人間を餌にしようって奴なんだよ?どうやって折り合いつけろって言うの?」
リョウに手を貸しつつ、さやかは
『まあ、確かにそれはちょっと問題あるコンね』
「ちょっとか?」
首を傾げるリョウ。
『でも、だからといってケンカ腰はいけないコン。時としておおらかな心を持たないと、いざという時大事なことを見落とすコンよ?』
「そうだよ!さやかちゃんは、魔女をやっつけるために魔法少女になったんでしょ?あの子は魔女じゃない、同じ魔法少女なんだよ」
九尾の言葉に観方を得たという顔をしたまどかはなんとか自分の言葉を紡ぐ。
「探せばきっと、仲良くする方法だってあると思うの。やり方は違っても、魔女を退治したいと思う気持ちは同じでしょ?昨日の子も。あと、ほむらちゃんも」
ほむらの名前が出た時、さやかの身体がピクッと動く。
「マミさんだって、ほむらちゃんと喧嘩してなかったら…」
そのことに気づかずにまどかは言葉を続けるが、
「そんなわけない!まどかだって見てたでしょ?あの時あいつはマミさんがやられるのを待ってから魔女を倒しに来た。あいつはGS欲しさにマミさんを見殺しにしたんだ!!」
途中で弾かれたようにさやかが叫んだ。
「それ…違うよ…」
さやかの言葉にそう呟くまどか。
ほむらは結界内で重症を負っていて倒れていた。だから魔女のところに来るのが遅れたのである。
「あの転校生も、昨日の杏子って奴と同類なんだ。自分の都合しか考えてない!今なら分かるよ。マミさんだけが特別だったんだ。他の魔法少女なんて、あんな奴らばっかりなんだよ」
だが、その事実を知らないさやかは捲くし立てるように言う。
「夕べ逃した使い魔は小物だったけど、それでも人を殺すんだよ?次にあいつが狙うのは、まどかのパパやママかもしれない。たっくんかもしれないんだよ?それでもまどかは平気なの?ほっとこうとする奴を許せるの?」
「そんな…」
『クソ真面目コンね~』
ショックを受けた様子のまどかの足元でやれやれといったポーズをする九尾。
「真面目でなにが悪いの!?私はね、ただ魔女と戦うだけじゃなくて、大切な人を守るためにこの力を望んだの。だから、もし魔女より悪い人間がいれば、私は戦うよ。例えそれが、魔法少女でも」
九尾をキッと睨むさやか。
だが、当の九尾は平然としたものである。
「さやかちゃん…」
「キュゥべえも何とか言ってよ」
最後の頼みと、不思議生物にそう言うが、
『ボクから言わせて貰えるのは、無謀過ぎるってことだけだ。今のさやかじゃ、暁美ほむらにも、佐倉杏子にも、勝ち目はない。でもね、さやかは、聞き届けてくれないよ』
役に立たなかった。
『別に真面目なことが悪いという訳じゃないコンけど、でもクソ真面目な性格をしていると思考がヤバイ方向に向うこともあるコンよ』
が、こっちの不思議生物は違った。
『正しくあろう、真面目に生きよう。確かにそれは間違ってはいないコン。でも正しくあろうとすれば、堅苦しく生き方になってしまいやすくなるコン。そんでがんじがらめになって自分の心を追い詰めることになるコンよ。だから時として真面目を捨ててわがままに生きることも、豊かな心を育むために必要なことコンよ』
そう言うと九尾はさやかの肩にぴょんと飛び乗る。
ーー否、飛び乗ろうとしたが目測誤って落ちた。
『へぶし!』
「ちょっ、大丈夫か?」
リョウの言葉に九尾は起き上がると、
『……大丈夫じゃないコン。さっきも言ったコンけど、心が追い詰められると大事なことを見落とすコン。だからたまに盛大にふざけてみるといいコンよ』
「ふざける…九尾みたいに?」
『そうコンよ』
まどかの言葉にうなずく九尾。
『堅苦しく生きていたついつい視野が狭くなるコン。でも心をおおらかに持ってば広い視野で物事を見られるコン』
そう言ってまどかの脚に手を置く九尾。
『視野が広がれば、人生の選択肢も増えるというものコン。選択肢が増えれば、それだけ後悔しない可能性が増えるということコン。という訳で、ボケてみるコン』
「「「なんで!?」」」
突然の最後に脈絡のない発言が出たことに驚愕するまどかとユウ。
「ちょっ、俺は!?」
『なにを言っているコン。ボケとは即ちギャグ、そしてギャグとは笑いと言う名の人を幸せにさせる心のビタミンを与えるコン。誰かを笑わせれば、自分も楽しくなって、幸せな気分になるコンよ。そして幸せになれば心に余裕が出来るものコンよ』
「「「う~ん…」」」
なにかいいことを言っているような気がするが、相手がまどかたちが知る中で最大の胡散臭い生き物な上に、なんとも砕けた口調なので今ひとつ説得力がない。
「九尾…一歩間違えば、命を落とす。あたしはそんな世界にいるんだよ?なのにふざけてなんかいられないよ!」
『まあ、決めるのはさやかんコンし、なにより真面目に生きるのが間違っているってわけじゃないコン。けど、正しくあろうとしていると、時として大事な事を見落とすこともあるということを。というわけでまどっち。爆笑ネタをどうぞ』
「ええ!?」
突然の無茶振りに物凄く慌てるまどか。
まあ、慌てない無茶振りがあるのかは疑問だが。
「え、と…え~と……」
きょときょとと周りを見ていたまどかだったが、キュゥべえを見ると、
「うさぎ!」
と言ってキュゥべえの耳から生えているのを持ち上げ、うさぎの長い耳に見えなくもないようにしてみた。
『コーン。それにしても、さやかんはその杏子とやらと出会ったら、具体的にどうする気コン?実力差はそうとうみたいコンけど?』
「「………おい」」
まさかのスルーという九尾のあんまりな対応に、思わずジト眼になる男子二名だった。

「おっ、眠れないのかい?」
夜、風呂上りでくつろいでいた詢子は、降りてきたまどかに声をかける。
「うん…ちょっといい?」
まどかはジュースで、詢子はお酒で軽く乾杯する。
「友達がね、大変なの」
ジュースを一口飲んだまどかは、ぽつりと切り出した。
「やってることも言ってることも、たぶん間違ってなくて。なのに、正しいことをがんばろうとすればするほど、どんどんひどいことになっていくの」
「よくあることさ」
「え?」
母の言葉に声をあげるまどか。
「悔しいけどね。正しいことだけ積み上げてけば、ハッピーエンドが手に入るってわけじゃない、むしろみんながみんな、自分の正しさを信じ込んで意固地になるほどに、幸せって遠ざかってくもんだよ」
「………間違ってないのに幸せになれないなんて、ひどいよ」
「うん」
素直にそう思うまどかに詢子はうなずいた。
「私、どうしたらいいんだろ?」
「そいつばかりは、他人が口を突っ込んでもきれいな解決はつかないね」
「………」
詢子の言葉に顔を落とす。
「……たとえきれいじゃない方法だとしても、解決したいかい?」
まどかの表情に、一瞬ほど間を置いた詢子はそう問い掛ける。
「うん」
「なら間違えればいいさ」
まどかがうなずくと、そう答えた。
「え?」
意外すぎる言葉に、思わず母を見る。
「正し過ぎるその子の分まで、誰かが間違えてあげればいい」
「間違える?」
「ずるい嘘ついたり、怖いものから逃げ出したり。でもそれが、後になってみたら正解だったってわかることがある。本当に他にどうしようもないほどどん詰まりになったら、いっそ、思い切って間違えちゃうのも手なんだよ」
「それがその子のためになるって、わかってもらえるかな?」
夕方のさやかの表情を思い出すまどか。
「わかってもらえない時もある。特にすぐにはね。言ったろ、きれいな解決じゃないって。その子のこと諦めるか、誤解されるかどっちがマシだい?」
その言葉にハッとなる。
「ま~どか。アンタはいい子に育った。嘘もつかないし、悪いこともしない。いつだって正しくあろうとしてがんばってる。子どもとしてはもう合格だ」
そう言うとグラスに口をつける詢子。
「ふぅ、だからさ。大人になる前に、今度は間違え方もちゃんと勉強しときな」
「勉強…なの?」
「若いうちは怪我の治りも早い。今のうちに上手な転び方覚えといたら、後々きっと役に立つよ」
ふとまどかは九尾が似たことを言っていたのを思い出す。
「大人になっちゃうとね。どんどん間違うのが難しくなっちゃうんだ。背負ったものが増えるほど、下手を打てなくなってく」
「ふぅん…それって、辛くない?」
「大人は誰だって辛いのさ。だから酒飲んでもいいってことになってんの」
思わずクスッと笑うまどか。
「私も早くママとお酒飲んでみたいな」
「おう、さっさと大きくなっちゃいな~。辛い分だけ楽しいぞ、大人は~」
まどかの言葉にそう楽しげに言う詢子だった。

上条恭介の家の前に、さやかはいた。
ーーあら?上条さんなら昨日退院したわよ
ーーリハビリの経過も順調だったから予定が前倒しになって
インターホンに押そうとした時、バイオリンの音色が聞こえる。
(練習…してるんだ……)
伸ばした手を引っ込め、上条宅に背を向ける。
「会わないのか?」
「どわあ!!?」
振り向いたすぐ目の前に、九尾を頭に乗せたリョウがいた。
「アンタ…なんで!?」
「お前をストーキングしていたからだ」
「………」
「あれ、どうした?頭を抱えてうずくまって」
「いや、そこまではっきり言われるとなんと返していいのか……」
「しかし、いいのか?わざわざ来たのに会いもしないで帰るなんて」
「全くだね」
第三者が、リョウの言葉を同意する。
「お前は」
「佐倉……」
『アンコ!!』
ガーーーーン。と鈍い音が響く。
ガードレールに杏子が頭を思いっきりぶつけた音だった。
『痛そうコンね』
「誰のせいだ…あたしはきょうこだ……」
『でも、字はそう読めるコンよ?』
いつ知った。
「まあ、いい……」
気を取り直す杏子。
「そいつの言うとおり、会いもしないで帰るのかい?今日一日追いかけ回したくせに」
「お、ストーキング仲間か?」
「違う!」
リョウの言葉に怒鳴ると杏子は、
「知ってるよ。この家の坊やなんだろ?アンタがキュゥべえと契約した理由って」
そう言って上条家を見上げる。
「まったく。たった一度の奇跡のチャンスをくっだらねぇことに使い潰しやがって」
「別にその奇跡をなにに使おうが、当人の自由だと思うぞ」
「そうよ、あたりの勝手でしょ!」
さやかとリョウをキッと睨む杏子。
「うるさいよ、バカ。魔法ってのはね、徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるためのもんなんだよ。他人のために使ったところで、ロクなことにはならないのさ。巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」
そう言うとニヤリと笑う。
「惚れた男をモノにするならもっと冴えた手があるじゃない。せっかく手に入れた魔法でさぁ」
「何?」
「生憎、美樹は洗脳系は使えんぞ。海香や沙々じゃあるまいし」
おいコラ待てや。
「そんなもんいらないさ。ただ今すぐ乗り込んでいって、坊やの手も足も二度と使えないぐらいに潰してやるのさ。アンタなしでは何もできない体にしてやるんだよ」
「なっ!」
杏子の言葉に絶句するさやか。
『ヤンデレコンか!?』
流石の九尾もこれには驚いた。
「そうすれば今度こそ坊やはアンタのもんだ。身も心も全部ね」
「いや、そんなことされたら間違いなく嫌われると思うぞ。むしろそうなったら引く。かみやんの方に」
「バレないようにやればいいのさ」
なにか微妙に間違った方向に引くリョウにそう言うと、
「気が引けるってんなら、アタシが代わりに引き受けてもいいんだよ?同じ魔法少女の好だ。お安い御用さ」
と言ってさやかに笑いかけた。
無論そんな発言にさやかが黙っているわけもない。
「絶対に…お前だけは絶対に許さない。今度こそ…必ず…!」
『まあまあ、落ち着くコン。ただの挑発コンよ』
宥める九尾だが、
「うるさい!」
と一括された。
「場所変えようか?ここじゃ人目につきそうだ」
そんなさやかの様子に、杏子は余裕の表情で言った。

ーー正し過ぎるその子の分まで、誰かが間違えてあげればいい
「間違える……」
と、キュゥべえの声が響く。
(まどか、まどか! 急いで、さやかが危ない!ついてきて!)
「え?」

さやかたちは国道の上を通るかなり大きな歩道橋の上にいた。
「ここなら遠慮はいらないよね。いっちょ派手にいこうじゃない」
杏子の言うとおり、今の時間帯にここには人は滅多に通らない。
身構えるさやか。
「待って、さやかちゃん!」
そこにキュゥべえに連れられたまどかが駆けつける。
途中で合流したのか、ユウも一緒である。
「まどか。邪魔しないで!そもそもまどかは関係ないんだから!」
「ダメだよこんなの、絶対おかしいよ!」
「ふん、ウザい奴にはウザい仲間がいるもんだねぇ」
まどかの登場に馬鹿にしたように言う杏子。
「じゃあ、貴女の仲間はどうなのかしら」
その背後に、ほむらが現れた。
(なんか、ホラーじみてきたな…)
ふとそんなことを思うユウ。
「話が違うわ。美樹さやかには手を出すなと言ったはずよ」
「はっ、いままでなにもしなかったくせに、よく言う」
「……行動を起こしたのはあなたが行動を起こしたのよ」
「そうかい。だけど、どの道向こうはやる気だぜ」
「なら、いまから私が相手をする。その代わりあなたは手出ししない。それでいい?」
「ハンッ、じゃあコイツを食い終わるまで待ってやる」
自分の食べていたお菓子(残りちょっと)を指差す杏子。
ほとんど冗談だったのだが、
「充分よ」
「マジか!?」
あっさりと答えが返ってきたことに驚くのだった。
「ナメるんじゃないわよ!」
明らかに馬鹿にされているほむらの言葉に憤りを見せるさやかはソウルジェムを取り出す。
その瞬間、
「さやかちゃん、ゴメン!」
まどかはそう言ってさやかからソウルジェムをひったくる。
と、思った矢先。
「えいっ!」
と言って、
「なっ!?」
「にっ!?」
「ぬっ!?」
「ねっ!?」
『のを!?』
歩道橋から投げ捨てた。
投げ捨てられたソウルジェムは上手い事走っていたトラックの荷台に乗っかる。
「ーーっ!」
と、思っているとほむらが消える。
どうやらソウルジェムをとりに行ったらしい。
「まどか!あんたなんて事を!あんまりの行動に転校生以外きれいにな行揃って驚いちゃったじゃない!!」
「だって、こうしないと…」
怒りの声をあげるさやかにまどかがそう言いかけた時だった。
「ぇ…さやかちゃん?」
さやかがまどかに倒れこんだ。
「『ーー?』」
顔を見合わせるユウと九尾。
「おーい、ミキティー?」
「ミキティはやめろ」
さやかに声をかけるリョウに杏子がツッコム。
彼女も怪訝な顔をしている。
『今のはマズかったよ、まどか。よりにもよって、友達を放り投げるなんて、どうかしてるよ』
「何?何なの?」
「なに言っているんだ?」
キュゥべえの言葉にまどかとリョウが疑問の声をあげる。
『友達を投げ捨てるって、まどっちにそんな腕力あるとは思えないコンよ?』
「せいやー!」と言いながらさやかを放り投げるまどかを思い浮かべる九尾。
「まさか…!?」
なにかに気づいたようにトラックが走り去っていった方を見るユウ。
彼の反応になにかを感じたのか、杏子はまどかに近づいた杏子がさやかの首を掴んで持ち上げる。
「やめてっ!!」
「おい、美樹が窒息するじゃないか!」
「……?……ーー!!」
まどかとリョウの言葉を無視してさやかを見ていた杏子は、目を見開く。
「どういうことだオイ…」

「コイツ死んでるじゃねぇかよ!?」

「えっ?」
「は?」
杏子の言葉に間の抜けた声をあげるまどかとリョウ。
「さやかちゃん?…ね?さやかちゃん?起きて…ねぇ、ねぇちょっと、どうしたの?ねぇ!嫌だよこんなの、さやかちゃん!!」
杏子の言葉を理解出来ない……したくないまどかは、必死で杏子が下ろしたさやかの身体に声をかける。
そんな彼女を姿に、ユウはどんな顔をしてよいのかわからなかった。
ドン!という鈍い音が響く。
驚いてユウが音のした方向を見ると、どうやら杏子が手すりを叩いたようだ。
「何がどうなってやがんだ…オイッ」
『君たち魔法少女が身体をコントロールできるのは、せいぜい100メートル圏内が限度だからね』
この状況を説明できる存在の声が響く。
「100メートル?何のことだ……どういう意味だ!?」
『普段は当然肌身離さず持ち歩いてるんだから、こういう事故は滅多にあることじゃないんだけど』
「何言ってるのよキュゥべえ!助けてよ、さやかちゃんを死なせないでっ!!」
『はあ…まどか、そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだって』
「え?なに…言ってるの?」
『さやかはさっき、君が投げて捨てちゃったじゃないか』
「なん…だと?」
「どういう…意味だ?」
驚愕の表情をする杏子とリョウ。
こんな真剣な場面だというのに、九尾はまた「せいやー!」と言いながらさやかを放り投げるまどかを思い浮かべいた。
『ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ』
キュゥべえは説明を始める。
『君たち魔法少女にとって、元の身体なんていうのは、外付けのハードウェアでしかないんだ』
淡々と、
『君たちの本体としての魂には、魔力をより効率よく運用できる、コンパクトで、安全な姿が与えられているんだ』
まるでごく当たり前なことを話すように。
『魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ』
「テメェは…なんてことを…。ふざけんじゃねぇ!!それじゃアタシたち、ゾンビにされたようなもんじゃないか!!」
「いや、どっちかっていうとラジコン…」
「どっちでもいい!!」
リョウの言葉に杏子は怒鳴る。
『むしろ便利だろう?心臓が破れても、ありったけの血を抜かれても、その身体は魔力で修理すれば、すぐまた動くようになる』
だが肝心なキュゥべえの口調は実にあっさりとしたものである。
『ソウルジェムさえ砕かれない限り、君たちは無敵だよ。弱点だらけの人体よりも、余程戦いでは有利じゃないか』
「確かにそうかもしれねえが…」
キュゥべえの言わんとすることはリョウにも理解は出来た。
だがなんの説明もなしにそんなことをされたらたまったものではない。
当事者なら尚の事。
「ひどいよ…そんなのあんまりだよ…」
涙をこぼすまどか。
『君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする。訳が分からないよ。どうして人間はそんなに、魂の在処にこだわるんだい?』
そう言って小首を傾げるキュゥべえ。
その姿は、本当に不思議そうだった。
「あっ、暁美……」
ユウの言葉どおり、ほむらが息を切らせながら戻ってきた。
彼女がそっとさやかの手にソウルジェムを乗せると、
「ん……」
さやかが目を覚ます。
彼女は自分を見つめる周囲にきょとんとした顔をする。
「なに?なんなの?」

ーー次回予告
リョウ「7話か…ライトだと感情あるキュゥべえとメガほむと、というか暁美が登場したな…」
さやか「あんまりライトの話は…というか6話は前後編だったから…」
ユウ「そういえば6話の前編と後編でまどか☆マギカの6、7話相等だったな。ジェムの100m云々はやらなかったが」
マミ「そもそもライトはその設定事態なかった気がするわ」
杏子「正確には書き手が考えていないんだよな。そもそも鬱展開を吹っ飛ばしたいとかいう理由で書いていた話だからない方がいいし」
九尾『それにしてもトラックを追いかけるとは…ほむほむはジェットババアコンね。愛さえいらなくなった絶望ほどじゃないコンけど』
まどか「体育で凄い記録出したのも、加減していたんだ…」

次回、第8話 本当の気持ちと向き合えますか

ほむら「誰がゼー、ハー、ババ…ゼー、ハー…よ……」
海香「息絶え絶えね。無理もないけど。はいドリンク」
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