リョウ「6話が変更されたJ」さやか「J?」

杏子がユウとリョウに興味を持つシーンがないとおかしような…と思って7話に入れようとしていたのですが長くなりそうなので6話に入れました。
よって再び6話を掲載します。
それとタイトルを生命の救済者から貴石の契約者に変更しました。
ちなみに変更するために色々やっていて気づいたのですが最初この小説のタイトルは魂の救済者でした…。




「本当に、どんな願いでも叶うんだね?」
念を押すように言うさやか。
『大丈夫、君の祈りは間違いなく遂げられる』
その問いに、キュゥべえはいつもと変わらぬ口調で答えた。
『じゃあ、いいんだね?』
「うん、やって」
そう言ったさやかは苦しみを覚える。
「うっ…」
『さあ、受け取るといい。それが君の運命だ』
キュゥべえの言葉に従うように、彼女は目の前に現れた青色の宝石を手に取る。
こうして、交通事故で不自由となった上条恭介の手を治すべく幼馴染の美樹さやかは魔法少女の道を歩み始めた。
それは、世界の呪う恋の唄。


 魔法少女まどか・かずみ☆マギカ - 貴石の契約者・まどか編

  第6話 後悔なんて、あるわけない


「ふあぁぁ…あ、はしたない。ごめんあそばせ」
「どうしたのよ仁美。寝不足?」
あくびをする仁美をからかうように問い掛けるさやか。
「ええ、昨夜は病院やら警察やらで夜遅くまで」
「えー、何かあったの?」
「何だか私、夢遊病っていうのか。それも同じような症状の方が大勢いて。気がついたら、みんなで同じ場所に倒れていたんですの」
「はは、何それ?」
仁美の言葉に笑うさやか。
「お医者様は集団幻覚だとか何とか…。今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの。はあ、面倒くさいわ…」
「そんな事なら、学校休んじゃえばいいのに」
「ダメですわ。それではまるで本当に病気みたいで、家の者がますます心配してしまいますもの」
「さっすが優等生!偉いわー」
あははと笑うさやか。その笑顔はとても嬉しそうだった。
その嬉しそうな顔が、まどかをとても不安にさせた。

「久々に気分良いわー。爽快爽快」
風車が並ぶ光景を背景にした場所で、さやかはごろんとねっころがる。
「さやかちゃんはさ、怖くはないの?」
心配そうに問い掛けるまどか。
「ん?そりゃあちょっとは怖いけど…昨日の奴にはあっさり勝てたし。もしかしたらまどかと仁美、友達二人も同時に亡くしてかもしれないって。そっちの方がよっぽど怖いよね」
そんな彼女を安心させるためか、さやかは努めて明るい口調で話す。
「だーかーら、何つーかな。自信?安心感?ちょっと自分を褒めちゃいたい気分っつーかね。まー、舞い上がっちゃってますね、私。これからの見滝原市の平和はこの魔法少女さやかちゃんが、ガンガン守りまくっちゃいますからねー!」
「後悔とか全然ないの?」
「そうねー。後悔って言えば、迷ってたことが後悔かな。どうせだったらもうちょっと早く心を決めるべきだったなって。あのときの魔女、私と二人がかりで戦ってたら、マミさんも死なないで済んだかもしれない」
「私…」
ふとマミが死ぬ前の出来事、彼女との会話と約束を思い出す。
「さーてーは、何か変な事考えてるなー?」
「私、私だって…」
もしあの言葉をもっと早く言っていれば、マミは死ぬことはなかった。
自責の念が彼女に心に重くのしかかる。
そんな彼女にさやかのデコピンが炸裂する。
「なっちゃった後だから言えるの、こういう事は。どうせならって言うのがミソなのよ。私はさ、成るべくして魔法少女になったわけ」
「さやかちゃん…痛い…」
「あ、ごめん。でもねまどか。願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦うハメになったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎたって言うのがちょっと悔しいだけでさ。だから引け目なんて感じなくていいんだよ。まどかは魔法少女にならずに済んだって言う、ただそれだけの事なんだから」
「うん…」
「さてと、じゃあ私はそろそろ行かないと」
と言いながら立ち上がるさやか。
「何か用事があるの?」
「まあ、ちょっとね。じゃあね、まどか」
「…うん」

「そっか、退院はまだなんだ」
「足のリハビリが、まだ済んでないしね。ちゃんと、歩けるようになってからでないと」
病院で恭介と会話するさやか。
「腕以外も願えばよかった…」
「ん?」
さやかの小さな呟きに聞き返す恭介。
「あ、ううん。なんでもない」
慌ててそう言うさやか。
「そう?手の方も、一体どうして急に治ったのか、まったく理由がわからないんだってさ。だから、もうしばらく精密検査がいるんだって」
「恭介自信はどうなの?どっか身体におかしなとこ、ある?」
ふと、そんなことを聞くさやか。
別にキュゥべえのことを疑っているわけではないのだが、それでも不安はある。
「いや、なさ過ぎて怖いっていうか。事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる。何で僕、こんなベッドに寝てるのかなって。さやかが言った通り、奇跡だよね、これ」
と答える恭介だが、急に黙り込む。
「ん?どうしたの?」
「さやかには…ひどいこと言っちゃったよね。いくら気が滅入ってたとはいえ…」
「変な事思い出さなくていいの!今の恭介は大喜びして当然なんだから。そんな顔しちゃだめだよ」
「うん。何だか実感なくてさ」
「まあ、無理もないよね。あ、そろそろかな?」
ふと時計を見たさやかはそう言うと、
「ん?」
「恭介、ちょっと外の空気吸いに行こう」
彼を連れ出した。

「あっ…みんな」
さやかが恭介を連れてきた屋上には、恭介の両親に彼の治療に携わった医者、看護婦の姿があった。
「本当のお祝いは退院してからなんだけど、足より先に手が治っちゃったしね」
恭介の父があるものを彼にあるものを手渡す。
「そ、それは」
バイオリンだった。
「お前からは処分してくれと言われていたが、どうしても捨てられなかった。私は」
上条父「さぁ、試してごらん。怖がらなくていい」
(マミさん、あたしの願い、叶ったよ。後悔なんて、あるわけない。あたし、今最高に幸せだよ)
マミを想い、空を見上げるさやか。
その様子を、エレベーターホールの陰に隠れていたリョウが見ていた。
「ふっ、どうやらさやかは問題ないな」
『本当にそう思うコンかね~』
と、足とものコン畜生が余計な事言う。
「どういう意味だよ?」
『いや…コン?』
ふと、九尾はなにかに気づいたような声を出す。
「どうした?」
『今誰かが見ているような気が…』
「はあ?」
言われて辺りを見回すリョウだが、この屋上に隠れられる場所など、彼らがいるところしかない。
「気のせいじゃねえの?」
『そうコンかねえ…』
そう言って九尾は首を傾げた。

「ふぅん…。あれがこの街の新しい魔法少女ねぇ…」
九尾の感じた視線は気のせいではなかった。
病院からはるか離れた展望台から魔法で強化した双眼鏡でさやかの様子を覗く少女がいたのだ。
『本当に彼女と事を構える気かい?』
「だってチョロそうじゃん。瞬殺っしょ、あんな奴。それとも何?文句あるっての?アンタ」
『すべて君の思い通りに行くとは限らないよ。この街にはもう一人、魔法少女がいるからね』
「へぇ、何者なの?そいつ」
『ボクにもよく分からない』
「はあ?どういうことさ。そいつだってアンタと契約して魔法少女になったんでしょ?」
『そうとも言えるし、違うとも言える。彼女も極めつけのイレギュラーだ。どういう行動に出るか、僕にも予想できない』
「へっ、上等じゃないの。退屈過ぎてもなんだしさ。ちっとは面白味もないとね」
そう言った少女はキュゥべえの言葉に気になる部分があることに気づく。
「……ん、”も”?」
『病院の屋上のエレベーターの辺りを見てみて』
言われたとおりにする少女。
「ん~、なんか変なやつがいるな」
『その彼の足元にいるのが暁美ほむらにも匹敵する、いやそれ以上のイレギュラーさ』
少女の目にリョウとマーブルチョコを取り合う九尾が映った。
というか、なにやっているのやら…。
「なんだありゃ?アンタの仲間か?」
『いや、ボクにもわからない。あんな生き物はいままで見たことない』
と、キュゥべえは少女がなんとも言い難い顔で見つめていることに気づく。
『なんだい?』
「いや…お前がそれを言うか?と思っただけさ」
少女の言葉には呆れが含まれていた。

「話って何?」
まどかたちいきつけのファースト店にやってきたほむらは、開口一番にそう言った。
彼女の目の前にまどかと、何故かユウがいた。
(いちゃ悪いかよ…)
地の文に文句言わない。
「あのね、さやかちゃんのこと、なんだけど…」
そんなメタ思考をユウが考えているとも知らず、言い難そうに切り出すまどか。
「あ、あの子はね、思い込みが激しくて、意地っ張りで、結構すぐ人と喧嘩しちゃったり。でもね、すっごくいい子なの。優しくて勇気があって、誰かのためと思ったらがんばり過ぎちゃって」
「なあ、それほめているのか?」
「え?」
ユウの言葉にまどかはきょとんとするので、
「ああ、いい。話を続けて…」
どこか諦めた表情でユウは先を促した。
が、まどかよりもほむらが口を開いた。
「魔法少女としては、致命的ね」
「そう…なの…?」
「度を越した優しさは甘さに繋がるし、蛮勇は油断になる。そして、どんな献身にも見返りなんてない。それをわきまえていなければ、魔法少女は務まらないわ。でないと、巴マミのように命を落とす」
「そんな言い方やめてよっ!」
思わず叫ぶように言うまどか。
だがすぐに声を小さくする。
「さやかちゃん、自分では平気だって言ってるけど、でも、もしマミさんの時と同じようなことになったらって思うと、私どうすればいいのか」
「美樹さやかのことが心配なのね」
まどかがさやかのことを本当に心配していることが伝わったのか、ほむらはそう言った。
「私じゃもう、さやかちゃんの力にはなってあげられないから。だから、ほむらちゃんにお願いしたいの。さやかちゃんと仲良くしてあげて。マミさんの時みたいに喧嘩しないで、魔女をやっつける時も、みんなで協力して戦えば、ずっと安全なはずだよね?」
(まあ、確かにな)
コーヒーを飲みながらそう思うユウだが、
(だけどそれってさやかとほむらが協力し合える前提なんだけどな…)
ほむらはともかく、さやかにそれが出来るとはユウには思えなかった。
「私は嘘をつきたくないし、出来もしない約束もしたくない」
「え?」
「だから、美樹さやかのことは諦めて」
「どうしてなの…?」
薄情ともとれる言葉に、疑問の言葉を言うまどか。
「あの子は契約すべきじゃなかった。確かに私のミスよ。貴女だけでなく、彼女もきちんと監視しておくべきだった」
「なら…」
なにかを言いかけるまどかだが、
「でも、責任を認めた上で言わせて貰うわ。今となっては、どうやっても償いきれないミスなの」
その言葉を遮るようにほむらはそう言う。
「いや、いま何気にこの人まどかを監視していた言ったよね?」
だがユウにはその言葉に聞き捨てならぬものがあった。
「死んでしまった人が還って来ないのと同じこと」
「いやだから監視って…」
「一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんてない」
「いやだから…それってストー……なんでもないです」
物凄い冷たい目で撃墜されたので黙るユウ。
「あの契約は、たった一つの希望と引き換えに、すべてを諦めるってことだから」
「だから、ほむらちゃんも諦めちゃってるの?自分のことも、他の子のことも全部」
「ええ。罪滅ぼしなんて言い訳はしないわ。私はどんな罪を背負おうと私の戦いを続けなきゃならない」
そう言うとほむらは立ち上がる。
「時間を無駄にさせたわね。ごめんなさい」
そして立ち去る。
「お、おい。ちょっと待て」
と、ユウは慌てて追いかけ、店を出たところでなんとか彼女に追いつく。
「なにかしら?」
「あんな言い方しなくても……あいつはただ美樹のことが……」
「わかっているわ。でもわたしにはどうすることも出来ないの」
「……」
あっさりと言うほむらに、ユウは言葉に詰まる。
ユウが次の言葉を言う前に、
「ところで、前にあなたに話しがあるって言ったわよね?」
ほむらの方が切り出した。
「え?ああ…」
「魔女が見えるそうだけど……」
「ああ、この間九尾やキュゥべえと出会った時に知った。魔法少女とかのことはそれまで知らなかった」
「……そう。響リョウは?」
ユウの言葉に少し考える素振りをすると、リョウについて聞いてきた。
「あいつは九尾の力で見えるようになっているだけだ。九尾の言葉だとそろそろ見えなくなるらしいけど」
「彼も戦えるようだけど…あの力は?」
「剣の方はよくわからないけどあの鎧の方は九尾が変身したものだ。まあ、使い魔に一匹倒すのがやっとだけど」
「…………」
次々と質問していたほむらは突然押し黙る。
「………暁美?」
「つまらないことを聞いたわね。それじゃあ」
怪訝に思い問い掛けるも、ほむらはそう言って髪をかきあげると立ち去っていった。
「おい、ま」
再び慌てて追いかけるユウだが、曲がり角で追いついたと思って曲がると、すでにほむらの姿はなかった。
「……また消えた」

「おー、マイブラザー!ここだ、ここだ!」
「お前……なんでこんなところに呼び出したわけ?」
そう言ってレーシングゲームをしているリョウに声をかけるユウ。
彼の操作していた車が盛大にクラッシュしたところだった。
「HAHAHA、大☆失☆敗!!」
「アホか…」
そう言うとユウは周囲を見回す。
レーシングゲームを始め、シューティングゲームやクレーンゲームやダンスゲームなど、様々なゲームの台が並んでいた。
そう、ゲームセンターである。
「いや、美樹のやついま家に帰っていてな。上がるわけにも行かないしパトロールまで時間があるらしいからここで暇を潰しているのだよ」
「あ、そ」
「という訳で次はクレーゲームでも挑戦してみるか」
「いや、なんでだよ」
あまりにも唐突なリョウの発言にいつもどおりユウはツッコム。
「いや、あのクレーンゲームの景品のぬいぐるみを手に入れて女子の好感度をあげようと思っただけだ」
なんともはっきり言うやつだ。
そう思いながらクレーンゲームに挑戦するリョウユウはを見ていると、
「失敗だ!」
速攻で失敗した。
思わず、
「やれやれ」
と言ってしまうほどに。
「よし、次はあれに挑戦だ!」
「もう諦めんのかよ、せめて二、三回やってから…って、あれはなんだ?」
「見てわからんか?ダンスゲームだ。曲にあわせて踊るというやつだ」
そう言うとリョウはそのゲームに挑戦した。
別にゲームをやる気のないユウはリョウのプレイを眺めていたが、
「へたくそ」
だが、散々な様子のリョウをばっさりと言い放った。
「む!以外と難しいじゃないか!!だがならばこそ挑戦するまで!!」
「まだやんのかい」
さっきのクレーンは速攻で諦めたくせに。
「マイブラザーも挑戦だ!何人かでも出来るみたいだぞ!」
「遠慮します」
「だが断る」
「いや、日本語としてその返しおかしいだろ」
もう少しリョウのプレイを見るユウ。
(しっかし、本当に…)
「ぶざまだねぇ」
と、ユウが思った事と同じ事をいつの間にか隣にいたポッキーをくわえた赤いポニーテールの少女が言った。
「なんだと!ぶざまと言われたら悲しいじゃないか!本当のことだけに」
「自覚あるんだ」
「まあ、代わりなよ。あたしがお手本ってやつを見せてやるからさ」
「手出し無用!女に手助けされたとあっては末代までの恥!」
「大丈夫だリョウ。お前に子孫は出来ない」
「ちょっ!マイブラ、それ普通に酷くねえ!?」
「略すな」
「いいから代われ」
はあ、とため息混じりに言う少女。
「良かろう!そこまで言うなら代わろうじゃないか!公共の場では譲り合いの精神が大事だからな!」
そう言うと今度は素直に少女に譲るリョウ。
「ではお前の腕を見せてもらおう!あそこまで言ったのだから可愛いだけではないのだろうな!!」
「な!?お前なに言い出すんだよ!!」
リョウの言葉に顔を赤くする少女。
その反応に、
(あ、ちょっと可愛い)
と思うユウだったが、口に出すとなんとなく殴られそうなので思っただけにした。
「じゃあ見てなって」
そう言って早速始める少女。
「……食べながらのゲームプレイはやめてって書いてあるけど?」
ポッキーをくわえたままの少女にユウはそう言うが、無視された。
「まあ、いいけどね」
プレイする少女をしばらく見ていたが、
「普通にうまいな」
とユウが言うとおり普通にうまかった。
「ま、こんなもんだね」
パーフェクトをたたき出した少女はふふん、と得意げに言う。
「うまいと言うしかないじゃないか。是非ともお近づきになりたい。そのためには名前を聞かねばならいが名前を聞くには先に名乗るのが礼儀。俺は響リョウだ。あっちが我が盟友のユウとゆうんだよーん」
「「………」」
痛い沈黙が流れる。
「ん?どうした、二人とも」
「いや、お前なんで不思議そうな顔でできるのか不思議だわマジで」
首を傾げるリョウに完全に引いた顔のユウ。
「はっはっはっ、悪い悪い。ついテンションが上がってしまった」
「なんつうか、濃いな……」
ユウと同じく引いた様子の少女がそう呟く。
「まあ、いい。あたしは佐倉杏子っていうんだ」
「ほ~、アンズというのか」
「きょうこだよ!確かにアンズとも読めるけど!つか、なんで聞いただけで文字がわかるんだよ!!」
「なんでって、活字だからな」
「意味わかんないんだけど!?」
リョウの言葉に叫ぶ杏子だが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「まあいいや。とりあえずよろしくな。ところで…」
と言うと、杏子は持っていたロッキーの箱をリョウに差し出し、
「食うか
「あ!と驚く超バニラ!!いかんもうこんな時間だ。すまんが野暮用があってもう行かねばならない!という訳でいうぞマイブラザー!!」
突然リョウはそう言うと、ユウの襟首を掴んで走り出した。
「首が絞まるわ!つか、なんで襟首なんだああああああああ!!普通腕だろおおおおおおおおお!!」
引きずられていくユウの叫びもやがて聞こえなくなると、杏子だけが一人ぽつんと残される。
「なんだか嵐のような奴だな…」
杏子はそう呟くと差し出したロッキーの箱から一本取り出し、
「しかし、魔女が見える変な力を持った男だって聞いていたか、どんな奴らかと思っていたら」
それをくわえると、
「ただの馬鹿だね、あれは」
と言った。


『緊張してるのかい?』
「まあね。一つ間違えたらお陀仏なわけだし」
そう言うさやかの脳裏に、マミの姿が浮ぶ。
と、背後でチーンという音がする。
振り向くと、九尾がお鈴を手に持っていた。
彼が窓から放り投げられたのは次の瞬間だった。
『緊張をほぐそうとしただけコンよ?』
「縁起悪すぎるわ!」
まったく…。と言った心境で外に出たさやかを出迎えたのは、
「まどか?」
「俺は?」
ぽつりと呟くユウ。
「俺もいるぞ!!」
「さやかちゃん、これから、その…」
「そ、悪い魔女を探してパトロール。これも正義の味方の勤めだからね」
どこか得意気に言うさやか。
「一人で…平気なの?」
「平気平気。マミさんだってそうして来たんだし。後輩として、それぐらいはね」
「あのね、私、何もできないし、足手まといにしかならないってわかってるんだけど。でも、邪魔にならないところまででいいの。行けるところまで一緒に連れてってもらえたらって」
「……」
「ごめん…ダメだよね、迷惑だってのはわかってたの」
とさやかはまどかの手を握る。
「ううん。すっごく嬉しい…ねえ分かる?手が震えちゃってさ。さっきから止まらないの。情けないよね。もう魔法少女だってのに、一人だと心細いなんてさ。」
「さやかちゃん…」
「邪魔なんかじゃない。すごく嬉しい。誰かが一緒にいてくれるだけで、すっごく心強いよ。それこそ百人力って感じ」
「私…」
「必ず守るよ。だから安心して私の後についてきて。今まで見たいに、一緒に魔女をやっつけよう」
「うん」
「それに俺らもいるしな。最悪鹿目のやつは守れるさ」
と言うリョウ。
『……でもキミ1人だとあの剣を使えないよね?』
そんな彼にキュゥべえがそう言う。
「はっはっはっ。そのためにこの妖怪狐がいるんじゃないか☆」
「☆つけんな。うざいから」
『その九尾がいないんだけど?』
「「「「え?」」」」
4人は辺りを見回すが、キュゥべえの言葉通り、九尾の姿はどこにもなかった。
「ええ~!!さっきまでいてお鈴ならしていたのに!!?」
「どこにもおりんませんてか!?これでは俺が活躍できんではないか!!」
「安心しろ。いたとしてもそんなものはない」
「ちょっと待てマイブラザー!いまのは酷くね!?」
「あははは…」
なんだか急に明るくなった雰囲気に、思わず乾いた笑いをあげるまどか。
若干呆れていたが。
『ところで、本当にまどかを連れて行くのかい?』
と、確認をするように問い掛けるキュゥべえ。
「あたしバカだから、一人だと無茶なでたらめやらかしかねないし。まどかもいるんだって肝に銘じてれば、それだけ慎重になれると思う」
『そっか。うん、考えがあっての事ならいいんだ』
「キュゥべえ?」
ふと小首を傾げるまどか。
(君にも君の考えがあるんだろう? まどか)
そんな彼女にテレパシーで語りかけるキュゥべえ。
(さやかを守りたい君の気持ちは分かる)
さやかやユウが反応しないところを見ると、どうやらまどかにだけしか伝わっていないようだ。
(実際、君が隣に居てくれるだけで、最悪の事態に備えた切り札を一つだけ用意できるしね)
「私は…」
(今は何も言わなくていい。さやかもきっと反対するだろうし。ただ、もし君が心を決める時が来たら、僕の準備は、いつでも整ってるからね)
「うん…」
「鹿目?」
キュゥべえの言葉に小さくうなずくまどかにユウは眉をひそめた。

「ここだ」
「どこだ?」
「ここだって言ってんでしょうが!」
ソウルジェムの反応を頼りに、人気のない裏路地にたどり着くまどかたち。
『この結界は、多分魔女じゃなくて使い魔のものだね』
「使い魔も結界を張るのか」
さやかに張り倒されたリョウがへえ~、といった様子で言いながら起き上がる。
そんな彼を、もう少し緊張感持てよ。という目でユウは睨んだ。
「楽に越した事ないよ。こちとらまだ初心者なんだし」
「ま、練習試合ってやつだな」
さやかの言葉にうんうんうなずくリョウ。
『油断は禁物だよ』
「分かってる」
キュゥべえの言葉にさやかがうなずくいた時、使い魔を見つけたまどかが「あっ」と言った。
『キャハハハハハ☆』
目のない緑色のおさげの使い魔は、飛行機やら車やらに変化する下半身で舌を出しながら楽しげに飛び回っていた。
「あれが」
真剣な様子のさやかの隣で、
「真面目なところ悪いが、また見えないんだが…」
とリョウが言う。
「…本当に悪いぞ」
「まあ、待て。あの妖怪狐もこうなることは予想していた」
そう言うとリョウは懐からバイザーを取り出す。
「これがあれば妖怪狐の鎧がなくても魔女が見えるそうだ」
『それ、彼が作ったのかい?というか、彼の鎧があれば見えるのかい?』
「らしいぜ。どっちの質問に対しても」
『そうなんだ。やはり彼はかなり凄いんだね』
リョウの答えに感心したように言うキュゥべえ。
「なんかバカそうな使い魔だな…」
バイザーをつけたリョウは暢気な様子で言う。
「使い魔なんてみんなあんなもんだ」
相方の反応にしれっと言うユウ。
と、使い魔はキャハハ。と笑いながらさやかたちから離れ始める。
「逃げるよ!」
「いや、ただこっちと違う方向に移動しているだけと思う」
慌てた声をあげるまどかの隣でユウは冷めた口調で言う。
「任せて!」
そんな彼の言葉を気にせず、さやかは剣を複数作り出して使い魔に投げた。
「モロにマミさんの影響を受けた戦法だな…」
使い魔が悲鳴ともとれる声を聞きながらぽつりと言うユウ。
下手な鉄砲も数撃てばあたる。かどうかはともかく、投げていた剣の一本が使い魔に命中する!と思った矢先、ガキイン!と音を立ててなにかに弾かれた。
「え?」
「なに!?」
「なんだ!?」
「かんだ!!」
「「待てえええい!!」」
妙な事を言うリョウに思わず叫ぶさやかとユウ。
「ちょっとちょっと。何やってんのさ、アンタたち」
と、槍を携えた一人の少女が舞い降りる。
「ボケと」
「ツッコミ」
「いや…そうじゃなくて…」
間髪入れずに返ってきたリョウ→さやかの返事に若干戸惑う魔法少女。
そんな彼女を「気持ちわかるぞ」と見つめたユウが、
「あれ?」
見覚えがあることに気づく。
「お前、さっきの…」
佐倉杏子だった。
「なんだ、マイブラザーの知り合いか?」
「いや、お前もさっきゲームセンターで会ったばかりだろうが」
「はっはっはっ、冗談だ。俺が知り合ったかわいい女の子を忘れると思っているのかーい」
「この野郎…」
リョウの対応にユウは若干イラッとしています。
「しかし、まさか魔法少女だったとはな」
「まあね。キュゥべえから魔女が見える男がいるって聞いてみたから、興味があったんだけど…」
少女はユウとリョウを交互に見比べ、
「ただの馬鹿だったから興ざめだよ」
と続けた。
「ちょっと待ってよ。こいつと自分同じ扱い!?」
「はっはっはっ。これはご愁傷様と言うしかないじゃないか」
「いや、アンタそれおかしいでしょうが…」
ユウの肩に手を置いて笑うリョウに額を押さえるさやか。
「ねえ、そんなことより逃げちゃうよ…」
と、まどかが使い魔が逃げることに気づく。
「いや、あれは逃げているというよりただ俺らから離れているだけだ」
「冷静に言っている場合!?」
ユウにツッコミをいれながらさやかが追おうとするが、杏子の槍が彼女の喉元に突きつけられ、追うに追えなかった。
「見てわかんないの?ありゃ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」
「だって、あれほっといたら誰かが殺されるのよ?」
さやかの言葉に杏子は呆れた様子で、
「だからさぁ、4~5人ばかり食って魔女になるまで待てっての。そうすりゃちゃんとグリーフシードも孕むんだからさ。アンタ、卵産む前の鶏シメてどうすんのさ」
「「「なっ!?」」」
彼女の言葉に驚愕の声をあげるさやかたち。
「な…。魔女に襲われる人たちを…あんた、見殺しにするって言うの?」
「アンタさぁ、何か大元から勘違いしてんじゃない?食物連鎖って知ってる?学校で習ったよねぇ?弱い人間を魔女が食う。その魔女をアタシたちが食う。これが当たり前のルールでしょ、そういう強さの順番なんだから」
さも当然といった様子で言われる言葉、
「そんな…」
まどかはショックを受けた顔をする。
「あんたは…」
対してさやかは声に怒りを含ませる。
一方、ユウは魔法少女が魔女に食われるパターンもある。と思ったが、流石に不謹慎すぎたので黙っていた。
「まさかとは思うけど。やれ人助けだの正義だの、その手のおチャラケた冗談かますために…アイツと契約したわけじゃないよね?アンタ」
どこか馬鹿にするようにそう言った杏子はひょいっと槍を動かす。
その槍にガキンと音を立ててさやかの剣が激突した。
「だったら、何だって言うのよ!」
「ちょっとさ、やめてくれない?」
そう言うと杏子は槍を引いて切り結んでいたさやかのバランスを崩す。
そして一瞬の間もなくそのまま強烈な一撃を彼女に与えた。
「遊び半分で首突っ込まれるのってさ、ホントムカつくんだわ」
「さやかちゃん!!」
吹き飛び、倒れるさやかに駆け寄るまどか。
「大丈夫か!?」
「生きてるかーい!」
「ふん、トーシロが。ちっとは頭冷やせっての」
そう言う杏子の目に、よろめきながらも立ち上がるさやかの姿が映る。
「おっかしいなぁ。全治3ヶ月ってぐらいにはかましてやったはずなんだけど?」
「さやかちゃん、平気なの?」
『彼女は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったからね。ダメージの回復力は人一倍だ』
「誰が…あんたなんかに。あんたみたいな奴がいるから、マミさんは…!!」
立ち上がりながら言うさやかのその言葉に、
「ウゼェ」
相手は妙にイラついた様子だった。
「超ウゼェ!」
(なんだ…?もしかして巴先輩と知り合いだったのか?)
先ほど声の調子が変わったことに気づくユウ。
「つうか何。そもそも口の利き方がなってないよね。先輩に向かってさぁ」
「黙れえええ!!!」
叫びながら斬りかかるさやか。
「チャラチャラ踊ってんじゃねぇよウスノロ!」
だがその刃は相手にまったく届いていない。
「さやかちゃん!!」
「ダメだ!近づくな!!」
ユウはさやかに駆け寄ろうとしたまどかを押さえる。
「お前が行ってどうにかなるわけじゃないだろ!!」
「言って聞かせてわからねえ、殴ってもわからねえバカとなりゃあ…後は殺しちゃうしかないよねッ!?」
「負けない…負けるもんかあああああああ!!」
「すげえな…」
激しい戦いに感嘆と、どこか悔しげな声をあげるリョウ。
「どうして?ねえ、どうして?魔女じゃないのに。どうして味方同士で戦わなきゃならないの?」
誰ともなしに疑問の声をあげるまどか。
「味方と思っていないんだよ」
「え?」
「ただ自分と考え方が違う…それだけで簡単に相手を殺せる…そんなもんだ…人間なんて…」
「如月…君…?」
「……ユウ?」
どこかいつもと様子が違うユウに、まどかとリョウは疑問に思う。
「つあ!」
と、さやかの悲鳴にそちらに意識が向く。
「まずいな…いくら傷がすぐに治るとはいえ、技量がそもそも違いすぎる…しかたない」
そう言うと神剣を武器モードにして肩に担ぐリョウ。
「役に立つとは思えんが、それでも黙って見ているなど男が廃る!俺が援護に言ってくる!」
「でも響君!」
「心配すんな。なんとかしてみせる」
「そうじゃなくて…九尾がいないのに、それ…持てるの?」
「ん?」
まどかの言葉にリョウはきっかり5秒ほど停止すると、
「忘れてた!!」
と言って剣の重さに押しつぶされる。
「……お前、そのネタ何回やるんだよ……」
「このSSではこれが初めてですが…」
「このSS言うな」
ため息をつくユウだった。
「お願い、キュゥべえ。やめさせて。こんなのってないよ!」
男2人はあてにならないと判断したのか(正しい判断)、キュゥべえに頼み込むまどか。
『ボクにはどうしようもない』
だがあっさりと無理と言うキュゥべえ。
『でも、どうしても力づくでも止めたいのなら、方法がないわけじゃないよ。この戦いに割り込むには、同じ魔法少女じゃなきゃダメだ』
「おい、お前まさか…」
キュゥべえの言わんとすることに気づくユウ。
『でも君にならその資格がある。本当にそれを望むならね』
「そうだ…私が契約すれば…」
「待て、かなm」
途中で途切れるユウの静止の声。
「終わりだよ!」
トドメと言わんばかりに跳ぶ杏子。
「ーーっ!」
思わず身構えるさやか。
「ぬおおおおおお!!」
そんな彼女を助けようと剣を引きずるリョウ。
「私…」
そしてまどかが契約しようとした時ーー
「それには及ばないわ」
暁美ほむらの声が響いた。

ーー次回予告
さやか「なによこれ!なんか転校生が物凄くかっこいいんだけど!?」
杏子「なんかあたしがかませみたいなじゃん!」
リョウ「俺なんて情けないじゃないか!!」
九尾『いや、アンタは割といつもどおりコン』
仁美「どちらかというと大人しいほうだと思いますが?」
マミ「でもなんか如月君、使い魔について詳しくない?」
ユウ「そういえば確かに…なんで?」
まどか「さあ…」
キュゥべえ?『……』

次回、第7話「こんなの絶対おかしいよ」

ほむら「あの病院の魔女と関係ありそうな魔法少女を探すのに忙しいのに余計な時間を取らせないでほしいわ」
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