紫天一家+フローリアン姉妹=エルトリアファミリー

と呼んでいます。
続きはSS。
タイトルは風邪をひいたユーリ。
なんでこんなSSを書こうと思ったかと言うと、GODの最終ステージでの紫天一家が平和的に揃っている画像でユーリがなんか風邪をひいているみたいに顔が真っ赤だったからです。
なお、エルトリアファミリーの設定はオリジナルです。
何故彼女達がミッドや本局にいるのかは一応考えてあります。
ちなみに、舞ーHIMEのナツキとシズルさんに特別ゲストとして出てもらいました。
では続きからどうぞ。

 ※ リリなのGODのネタバレを含んでいるIFシナリオです。

「熱は下がっていないようですね」
理のマテリアル、星光の殲滅者ーーシュテル・ザ・デストラクターは体温計の数字を見てそう呟いた。
「という訳でユーリ、今日も安静にしていてください」
「……はい」
シュテルの言葉に砕けぬ闇ーーユーリ・エーベルヴァインは素直にうなずいた。
「それにしてもユーリたら情けないな~。ぼくなんて風邪なんて引いた事ないんだよ!」
雷刃の襲撃者ーーレヴィ・ザ・スラッシャーの言葉にユーリの脳裏に馬鹿は風邪をひかない。という言葉が浮んだ。
だが言うとレヴィは傷つくだろうから言わないで置いた。
「馬鹿は風邪をひかないと言いますしね」
のだが、シュテルが言ってしまったのであまり意味のある気遣いではなかった。
「そーそー、ぼくって健康なだけがとりえで頭の方はからっきし…って、誰が馬鹿やねん!!」
「病人の前です。無用なノリツッコミは遠慮してください」
「いや、君が言ったから…」
シュテルの言葉にレヴィが文句を言おうとした時、通信を告げるアラームが鳴った。
「はい」
『遅いわ!我からの連絡はワンコールで出ぬか!』
通信に出たシュテルに理不尽な事を言うのは闇統べる王ーーロード・ディアーチェ。
『まあよい。それで、ユーリの具合はどうだ?』
「熱は下がっておりません」
『そうか…長引くな』
シュテルの言葉にディアーチェの声が沈む。
「ええ。それに今日はわたしもレヴィもいません。看護する者がいないのは少し不安です」
「大丈夫。一人でも大丈夫だから…ケホ、ケホ」
『無理はするな、馬鹿者が。まあ、我は今日戻る。それまでの辛抱だ』
「ぼく、今日は早めに帰るよ」
「わたしも、早めに帰宅します」
ディアーチェの言葉にレヴィとシュテルもそう言う。
「ごめん…」
『謝るな馬鹿者。子鴉風に言うと、貴様と我々は家族なのだ。貴様のために行動するのは当たり前であろう』
「わー、王様かっこいい」
腕を組みしながらのディアーチェの発言にパチパチと拍手するレヴィ。
『ふふん、当然であろう。我は王なれぞ!かっこよいに決まっている!!』
胸を張るディアーチェ。
『ま、そういう訳だ。貴様はなにも心配せずに養生しておれ』
「うん。わかった」
ユーリがうなずくとディアーチェは通信を切った。
「ではユーリ、なにかあったら遠慮なく連絡を」
「そうだぞー、遠慮なんかいらないからねー」
少ししてからシュテルとレヴィはユーリの部屋から出て行った。
その後、二人が家を出て行く音が聞こえると、家の中はしん、と静まり返った。

無限書庫、それは時空管理局が誇る最大のデータベースである。
というと聞こえはよいが、実際のところただ単に様々な書庫や文献などを壁一面本棚という馬鹿みたいな無重力室に放り込んだだけ。
ディアーチェが無限書庫の事をそう評価していたのを思い出しながら請求された資料を作成するシュテル。
確かにディアーチェの言った通り、様々なジャンル、マイナーな小説から禁断の魔導書に関する情報までそれはもう古今東西ありとあらゆる情報が、まったくの未整理で存在していた。
だがそれも今は昔、現在は現司書長が多くの司書達のがんばりのおかげで管理局にとってなくてはならない重要な施設へと変わっている。
もっとも、まだ半分の整理も出来ていない状態なのだが。
それでも情報を引き出すのに一個小隊を組んでいた以前よりは数百倍ましというものだろう。
そんな事を考えながら着々と資料を作成し続けるシュテルに、リインフォース・アインスが声を掛ける。
「少し休んだらどうだ?三時間は続けているぞ」
「お気遣いなく」
そう言うシュテルだが、流石の彼女も検索魔法をこれだけ長時間使用し続けるのは負担だった。
「定時に帰りたいので」
だが多少無理をしてでも早く仕事を終わらせたかったのだ。
「ユーリの風邪はまだ治らないのか?」
「ええ、まだ…」
リインフォースの言葉にうなずきながら次の書類を作成し始めるシュテル。
「だったらさあ、仕事誰かに少しは押し付けたら?ただでさえユーノがいないからアンタの仕事量増えているのに」
と、言ったのはたまたまそばまで来たアルフ。
ちなみに仕事量が増えているのはシュテルだけではない。
が、一番多く引き受けたてはいた。
「確かに早く帰りたいのは事実ですが、だからといって他の者に仕事を押し付けるなど出来ません」
「わかったよ…」
やれやれといったポーズでそう言うと、アルフはシュテルから離れた。
「せめてユーノがいれば…」
「それは言わないでください。師匠は遺跡発掘で忙しい身です」
そう、無限書庫のトップ、司書長ユーノ・スクライアが無限書庫にいないの理由は、遺跡発掘のためだった。
すでに半月も無限書庫を空けている。
発掘作業は一ヶ月の予定なので更に半月は帰ってこない。
無論、それ位でいまの無限書庫の機能が落ちる事は、それほどない。
「しかし、ユーリが風邪をひいたのが師匠が出発した後でよかったです。もしその前だったら師匠は発掘には行かずにわたしの仕事が早く終わる様にわたしの仕事を受け持った可能性がありますから」
「それは……十分に考えられるな…」
シュテルの言葉に苦笑するリインフォース。
誰かのためだったら楽しみにしていた発掘作業を取りやめるぐらいやってのける。
それがユーノ・スクライアという人物だった。
「ナノハといい、師匠といい、少しは自分の事にも気を使うべきだと思います」
ブツブツと呟くシュテルの姿に、さらに苦笑していたリインフォースは、ふとある事を思う。
「そういえば、ユーリは何故風邪をひいたのだ?なにやら事情がある様な事、以前言っていたが…」
「ああ、それですか」
リインフォースの言葉にシュテルはふう、とため息をつくと話し始めた。
「わたしにも責任があるとは言えます…」

「そういえば、今日は節分でしたね」
リビングで本を読んでいたシュテルは、ふと気づいた様に呟いた。
「セツブン?」
その言葉にレヴィとテレビを見ていたユーリが首を傾げた。
「あ、僕知っているよ。悪い子はいね~か~。って言って襲ってくる化け物を豆でフルボコにするやつでしょ」
「…………微妙に合っている分ツッコミし難いわ。たわけ」
と、シュテルの隣で本を読んでいたディアーチェがナマハゲと節分を混同しているレヴィにそう言い放った。
「簡単に言うと鬼という厄災の化身を豆で追い払う事で一年を無病息災ーー家族の誰も怪我も病気もならずに過ごせるようにというナノハ達の故郷の行事です」
「そうなんだ」
シュテルの説明にうなずくユーリ。
「それで、なにをするの?」
「まあ、鬼の役に豆を投げます」
「それだけですか?」
「それだけです」
ユーリの言葉にキッパリ返すシュテル。
「そんな簡単な事で、みんなが一年健康でいられるならやってみようよ!」
「そうですね」
レヴィの言葉にユーリは手を叩いて賛同した。
「いや、やったからといって本当に一年大事が起こらないというわけでは…」
ディアーチェの言葉をシュテルがとめた。
「よいではありませんか王。二人が楽しそうなのですから」
「………まあ、よいか」
その後、シュテルとディアーチェが鬼の役で豆まきを行なわれた。
ディアーチェは鬼役を行なうのを最初はごねたが、
「三人から投げられる豆をわたし一人で受けろと?」
と、シュテルの言葉と背後のオーラでしぶしぶ了承した。
レヴィは投げる気満々で、ユーリを外に出して豆をぶつけるなど論外だった。
ここまではよかった。
だが途中、ユーリがこれでは不公平だと鬼役を交代するべきだと言い、レヴィが了承したので交代する事になった。
しかし、
「豆…ないですね」
「だというのに交代を進言したのか?」
レヴィとユーリが外に出て、入れ替わりに入ったシュテルとディアーチェは用意した豆がほとんどない事に気づく。
「調子にのって投げちゃった」
「てへ☆」
某ケーキ屋のマスコットの様に舌を出すレヴィとユーリ。
かなりかわいかった。
「だがこれでは豆を投げれんぞ」
「ではここでやめるとしましょう」
「駄目ですよ。二人にもやって欲しいです」
と、ユーリ。
「そうだよ。それに、男は二言はない!」
「レヴィ、あなたは女です」
「あとその言葉、使い方が間違っておる」
レヴィの言葉にツッコミを入れた二人は、豆を買い足す事にした。
「少し待っていてください」
「すぐ戻る」
庭の二人のはーいと返事を聞いた後、シュテルとディアーチェは出て行った。
しかしどういう訳か、どの店に行っても豆は売っていなかった。
実はマテリアル達は知らない事だが、これには理由がある。
シュテルの話にも出た高町なのは。
彼女は自分の故郷の風習を自分の家で行なったのだ。
更に彼女の愛娘、高町ヴィヴィオは母の故郷の行事が大好きだった。
これだけならば豆がどこにも売っていないのとなんの関連もなかった。
だが、この日フェイト・T・ハラオウン執務官がたまの休みだった。
そして彼女はなのはの家に向かう最中、超弩級親馬鹿を発揮してヴィヴィオのために豆を買占めたのだ。
ちなみにその行為のせいでなのはのお説教をくらったりする。
ともかく、超弩級親馬鹿精神執務官のせいでシュテルとディアーチェが豆を手に入れた頃には、すっかり遅くなっていた。
そして家に帰った二人が見たものは、二人が出掛けた時と同じく庭で待つ二人の姿だった。
そう、二人はすぐ戻るという言葉を信じ、ずっとその場所で待っていたのだ。
ミッドチルダがいかに温暖な気候でも、冬場のこの時期に外にずっといたのでは身体が冷えてしまう。
それゆえに、流石に家の中でいるだろうと思っていたシュテルとディアーチェは絶句した。

「つまり、それが原因でユーリは風邪をひいたのだな?」
「ええ、わたしが節分など口にしなければ、そして王がすぐ戻ると言わなければ、そして…近隣のお店で何故か豆の売り切れが続いていなければ起こらなかった事態です」
「そうか…」
まさかフェイトが原因だとは夢にも思わないシュテルとリインフォースだった。
「だがあまり自分を責めるな。不幸な事故の様なものだ」
「ええ、わかっています。わたしや王、そして豆を買い占めたらしい金髪の美人なる人物に責任がない事も……」
「そ、そうか……」
そう言うシュテルだが、その言葉の奥底には明確な殺意があった。
だがその事を追求する勇気は、リインフォースにはなかった。
フェイト、ピンチ。
「さて、これで今日の分は終了しました」
「もうか?」
「ええ。後は家でも出来るので」
そう言うとシュテルは書類をまとめて帰り支度を始め、ようとした。
だが一人の司書の悲鳴にも近い声に、その作業をとめた。
とめるしかなかった。
「た、大変です。副司書長!”奴”です!!」
その言葉は広々とした無限書庫ないにまるで嵐の如く駆け巡った。
無限書庫において、”奴”と呼ばれる人物は一人しかいなかった。
時空航行艦クラウディア艦長にしてイヤガラセのような資料請求をしてくる男、クロノ・ハラオウン。
「馬鹿な!?司書長がいないのは”奴”も知っているはず!?」
「司書長不在な時に”奴”からの連絡など今までなかったぞ!!」
「お、何か個人的な連絡じゃないのか?」
「馬鹿言え、それならプライベート用回線を使うはずだ!」
司書達の中に動揺がはしる。
「いや、一度だけある…」
そんな中、老齢の司書が重い口調で言葉を紡いだ。
「あれは緊急事態の時だった。例え司書長殿が不在とわかっていても少しでも情報が欲しい。そんな事態だった…」
司書達は静かだった。
だが先程よりも動揺と緊張は凄まじかった。
ーーピッ。
回線をつなぐシュテル。
『シュテルか?すまない。緊急で調べて欲しい事があるんだ』
通信に出たクロノの表情や画面外の様子などから、緊急事態である事は想像するに難くはなかった。
「わかりました。すぐに調べます」
送られてきた調べて欲しいロストロギアの特徴に眼を通すと、シュテルはそう答えた。
『ユーノがいない時にすまないな…』
「いえ、いつも師匠にばかりまかせてばかりにもいかないでしょう」
申し訳なく言うクロノにそう言うと、シュテルは通信を切って、検索魔法を起動した。
「ちょっと待てシュテル!」
「なんでしょう?」
「いや…いいのか?」
司書一同を代表して、問い掛けたリインフォースにシュテルは、
「確かにユーリの事は心配ですが、だからといって職務を放棄するわけにもいきません。わたし達の働きによってもたらされる情報は、現場での局員達の安全性を高める事になるのですから」
と静かに語る。
そう言われては何も言えなくなる司書達。
「というか、わたしが早く帰りたいのを知っているのですから、手伝っていただけないでしょうか?」
「「「「「「「あ…」」」」」」」
言われて慌ててクロノの資料を見て、検索魔法を起動する司書達。
「それにわたしが遅くなっても、ユーリの看病はレヴィや王がいますから」
若干不安はあるものの、ユーリの看病はあの二人に任せる事にしたシュテルだった。

次元航行艦フェンリル。
ロード・ディアーチェが乗艦している艦の名前である。
現在、この時空航行艦は長期間の次元航行任務を終え、本局に帰還途中であった。
「ひさしぶりの本局か…」
その艦の艦長室にて、艦長のナツキ・クルーガーは重いため息をついた。
「邪魔するぞ小犬」
と、そこへ無礼千万の態度でディアーチェが入ってきた。
「なんだ?」
いつもなら艦長と呼ぶよう注意するのだが、艦長室には自分と副官のシズルしかいなかったので不問にした。
「ふっ、本来であれば王たる我が貴様らなどに言う必要のない事だが…」
「風邪をひいたユーリちゃんが心配やから、本局に着き次第すぐに帰らせてもらいたいんやて」
「ああ、構わんぞ」
「我を無視して話を終わらせるな!!」
用件をシズルに先に言われ、更にナツキが了承した事が不満らしく、怒鳴るディアーチェ。
「話は早い方がいいだろ」
そう言いながらシズルの淹れた紅茶を飲むナツキ。
「旨いな」
「それはどーも」
「貴様ら…我を馬鹿にしているだろ!」
「わかるか?」
「表に出ろ!エクスかリバーか、ジャガーノートをくらわしてくれる!!」
「ああいいだろ!こっちは提督稼業でストレスがたまっているところだ!いくらでも相手になってやる!!」
「でも王様?表出たら、死にまっせ?」
時空航行艦の外は当然次元空間である。
「比喩的表現だ馬鹿者!!誰が本当に次元空間に出るものか!!」
シズルの冗談にディアーチェが本気で怒っている後ろで、ナツキはディアーチェをボコるために訓練室を使おうと管制室に通信をつないだ。
「ああ、わたしだ。少し訓練室を使うので準備を…」
『あ、艦長。丁度今連絡を…』
「ん?」
『広域時空犯罪者、フィル・ザードの目撃報告が…』
「なに?………わかった」
「どないしました?」
「フィル・ザードがすぐ近くの管理世界に現れたらしい」
「フィル・ザードだと!?」
ナツキの言葉に声をあげるディアーチェ。
フィル・ザードとは武闘派の犯罪組織のリーダーで、かつてレヴィが大怪我をさせられた事があった。
そのため、ディアーチェとして是非とも自分の手で捕まえたい男なのだ。
「しかも奴は逃げ隠れが上手いからな。今逃がすと、次何時チャンスがくるか…」
「ならば行くしかなかろう」
「よろしいんどすか?」
「レヴィにしてくれた礼をしたやらねばならん。それに、ユーリの看病ならシュテル一人いればよかろう」
シズルの言葉にディアーチェは不敵に笑いながら答えた。
「では、いくとしよう。ストレス発散は別の機会だな…はあ」
「その発言は艦長としてどうなのだ?」
艦長として現場に出られないナツキの言葉に、呆れるディアーチェであった。

「はぁ~、早く終わらないかな~」
レヴィ・ザ・スラッシャーは時計を見ながら今日何度目かのため息をついた。
「僕は早く帰ってユーリの看病をしなくちゃいけないんだ」
「交代の時間まで待て」
ふてくされた態度のレヴィにそう言ったのシグナムだった。
レヴィが所属しているのは武装隊。
そしてシグナムは彼女の上司にあたる。
もっともレヴィに上官、部下という概念はないが。
「ま、なにも起きなければあと一時間もしないうちに帰れるよね?」
「ほう、珍しいな。普段はなにか事件でも起きないのか。などと言うくせに」
「だって、早く帰りたいんだもん」
「なるほど」
レヴィの返事にクスリと笑うシグナムは、
「ま、お前が帰れなかったとしても、シュテルやディアーチェがいるのだ。問題はあるまい」
そう言って、レヴィの頭をポンとなでた。
「まあ、そうかもしれないけどさ…」
とレヴィが言った時。
「わたしだ」
シグナムに通信がはいった。
「なんだと!?レヴィ!違法武器商人から押収した自動兵器数体が本局内で逃げ回っているらしい!」
「ええええええ!!?」

ふと目を覚ますユーリは時計をやる。
時刻は三人の誰かが帰ってきていてもよい時間だったのだが。
「誰も…いない………?」
家の中に、自分以外の気配はない。
「…ケホ」
念のためベッドから起き上がり、確認のために部屋を出ると、電気がついていないため薄暗い廊下を進むんでみる。
ユーリの耳には自分がはいているスリッパのペタペタという音しか聞こえない。
(…本当に誰もいないのですね)
そう思ってレヴィの部屋の前を通った時。
ーーごと。
何かが落ちる音が、はっきりと聞こえた。
(なんです!?)
レヴィの部屋のドアをバッと見るユーリ。
一瞬レヴィが帰っていたのかと思ったが、先程聞こえた音は窓から無理矢理入ろうとした様に聞こえる。
さらに同じ音が再度聞こえる。
(まさかーー泥棒!?)
なにやら話し声が聞こえるレヴィの部屋のドアを見ながら恐怖を感じるユーリ。
普段の彼女なら相手が管理局の白い悪魔とて恐れる相手ではない。
しかし自分の力を完全制御出来ていない上、今は風邪を体調がよくない。
まともな戦闘など出来るかどうか、いやはっきり言って無理だった。
ーー逃げよう。
そう思ったユーリの目の前で、ドアが勢いよく開いた。

「はあ、疲れた……」
自動兵器数体をスクラップにしたレヴィはトボトボと家路についていた。
「まったくなんだいなんだい。チョコマカチョコマカと、弱いんだからすぐに破壊されろよ」
本局内を逃げ回った自動兵器は、まだ未完成で武装がついていなかったため大した被害はなかった。
しかし武装がない分身軽で逃げ足が速く、また機動力もよかったためフェイトに匹敵する速度を持つレヴィでさえ捕らえるのに時間が掛かった。
「ん?」
ふと後ろを見ると、誰かが猛スピードで走ってくるのが見えた。
「おやおや?」
シュテルだった。
彼女はレヴィの姿を見ると驚いた表情で足を止め、
「レヴィ、何故ここに!?」
と聞いてきた。
「それはこっちのセリフだよ。本局で押収された機械をどっかの馬鹿が逃がしてさあ、それを追い掛けて…」
「ではいま家にいるのは王とユーリだけ?」
レヴィはシュテルの様子に違和感を覚えた。
なにか慌てている様に見える。
「お前達!」
「あ。王様」
「え!?」
レヴィの言葉に驚いて振り向くシュテル。
「王、一体何故!?」
シュテルの言葉にキーー、と音がするのでは?というとまり方をするディアーチェ。
「それはこちらのセリフだ!何故うぬらが家におらん?」
「緊急に来たロストロギアの資料検索に手間取りまして…」
「僕は逃げ出した自動兵器の撃破」
「我はテロリストの捕縛……つまり今家にはいるのはユーリ一人という事か」
「そうなります…」
ディアーチェの言葉にサー、と顔が青くなるシュテル。
「どうした?」
「どうしたのさ?」
普段というかまず見られない光景に戸惑うレヴィとディアーチェ。
そんな二人に、シュテルは静かに話し始める。
「実は、先程侵入者を告げるセキュリティ・システムが反応したのです。すぐに切れましたが…」
「なっ!?」
「ええ!つまり、ユーリに危険が迫っているって事!?」
「ええ…しかも今ユーリは本調子ではない。誤作動の可能性もありますが、もしそうでないなら……」
見詰め合う事数秒。
三人は弾かれた様に駆け出した。
時間にして数分だろう。
だが三人には何時間にも感じられた。
ともかく、家に着いた三人はドアを開けようとする。
「ーー鍵は掛かっています」
「早く開けぬか!!」
鍵を開け、中に入った三人は真っ直ぐにユーリの部屋に向かう。
「ユーリ!無事か!?」
「いない!?」
「ええ!」
部屋はもぬけの空だった。
「そんなぁ、ユーリ…」
「ええい、泣くでない!とりあえずエリアサーチを使って…」
「はい!」
探索魔法を起動しようとするシュテルとディアーチェ。
そんな二人のそばでレヴィはオロオロとしていた。
「どうしよう。どうしよう!」
「どうかしたんですか?」
と、そんな彼女に声を掛かる。
「ああ、アミタ!大変なんだよ!誘拐されて!!」
「ええ!一体誰が!?」
「誰がって……待てーーーい!!」
「え?」
「なんで君がここにいる!!」
レヴィの言葉にアミタことアミティエ・フローリアンの存在に気づいたシュテルとディアーチェも問いただす。
「何故あなたがいるのですか!」
「ええい、赤色。説明せい!!」
「なんでいるのかって…ユーリが風邪をひいたなんて聞いたらそりゃあ様子を見に来ますよ!!」
アミタの言葉になるほど、と納得するマテリアル達。
「では侵入者を告げるセキュリティが反応したのは…」
「ああ、わたし達のせいです。鍵を忘れてしまって…。そしたらレヴィの部屋の窓が開いていたので入られせてもらいました」
「な~んだ。そういう事か」
あっはっはっ。と笑うレヴィだが、彼女の後ろの二人には笑い事ではなかった。
その証拠に、レヴィの頭にルシフェリオンとエルシニアクロイツが直撃する。
「~~~~~~っ!痛ったいな!!」
「戯けが!貴様の不注意であろう!!今回は赤色でよかったが、もし害意ある者だったらどうするつもりだったのだ!!」
「痛い!殴らないでよ!!シュテるんのはともかく王様のはなんか棘がはえているんだからさ!!」
「ええい、刺してくれる!」
「痛い!痛たたた!ごめん、謝るから!!お願いだからもうやめて!!」
微笑ましい様な、止めるべきな様な光景を見ていたアミタはふと、何故レヴィはこの寒い季節に窓を開けっぱなしにしていたのだろう?と疑問に思った。
「ところで先程、わたし達と言っていましたが、もしかしてキリエも来ているのですか?」
「いえ、キリエは今日は用事があって来れませんでした。その代わり…」

マテリアル達の家のリビング、そこで地球から持ってきたコタツの中でぬくぬくとしているユーリの元にお粥が運ばれる。
「熱いから気をつけて食べるんやで」
「ありだとうございます。夜天の主」
「何故貴様がここにいる~~~~~~~~~~~!!」
ユーリにお粥を渡す八神はやての姿にディアーチェの絶叫が木霊する。
「なんで。って、ユーリが風邪ひいた。ゆーから心配で見に来たんや」
「ここは我らの家ぞ!貴様の様な小鴉が入ってよい場所ではない!即刻出て行け!!」
「王…そのくらいにしてください」
「そーだよ。ユーリにお粥作ってくれたんだよ?」
シュテルとレヴィの言葉に「ぐぬぬぬぬ」と呻き声をあげるディアーチェ。
必死で怒りを抑えているらしい。
「まあ、ユーリの世話をしてくれたから、今回は大目に見てやる」
なんとか怒りを抑えたディアーチェは腕を組んでそう言う。
ふとそんな彼女の姿にはやての中でイタズラ心が芽生える。
その時のはやての顔は、キリエがアミタをからかう時の表情にそっくりだと後のシュテルは語る。
「王様、王様」
「なんだ?気安く呼ぶ出ないわ」
「ユーリは風邪ひいてお粥を食べるのも一苦労や」
「普通に食べているではないか」
「いやいや、一苦労や。だ~か~ら~、王様があ~ん、してあげたらどうや?」
「なっ!」
はやての言葉は相当な威力があったらしい。
ディアーチェは顔は一瞬で真っ赤になる
「なっ、ばっ!何故王たる我がその様な事を……」
「ん~?聞けば、王様早めに帰る言うたそうやないか。王様が嘘なんか吐いてええんか?」
「なにを……。第一、そんな事を言ったらシュテルやレヴィとて同じではないか!!」
ロード・ディアーチェ。墓穴を掘った瞬間だった。
「ん?遅れてきたからユーリにお粥を食べさせなくちゃいけないの?」
「というか王様。すでにシュテルが食べさせています」
「なぬ?」
アミタの言葉通り、シュテルがユーリにお粥を食べさせている。
「次僕がやる~」
「わかりました。ユーリを火傷させないでくださいよ」
この時、ディアーチェは悟った。
ユーリにお粥を食べさせなければならない空気になっている事に。
「次、王様の番だよ」
「いや…我は……」
レヴィにスプーンを手渡され、ますます退路を失うディアーチェ。
いや、それ以前に、ジーっと見つめるユーリの目が。
「………」
目が。
「………がく」
観念した様にお粥をすくうディアーチェ。
「ほら、ふーふーして冷まさな。ユーリが火傷してまうで」
耳元ではやてがそう囁く通り冷ます。
そして目を閉じてあーんとしているユーリの口に運ぶ。
後数センチ。
シュテルとレヴィとアミタも固唾を呑んで見守る。
そして口に入る。というところで、
「だああああああ!!恥ずかしくてやっていられるかあああ!!」
ディアーチェはスプーンを放り投げて頭を抱えてしまう。
「あかんで。王様」
はやての責める様な言葉にディアーチェはギロッと睨む。
と思った瞬間、戸棚から何かを取り出すと、それではやての頭を思いっきり、スパーンと叩いた。
「いったーー!なんでハリセンやねん!!」
「やかましいわ!やかましいわ!!やかましいわ!!!恥ずかしい事をさせおって!!!!」
「王、ユーリが捨てられた子犬の様な目で王を見ていますが」
「見えん!なにも見えん!!」
「あかんでー、王様」
「黙れ小鴉!!」
「そーだぞー。いけないぞー」
「貴様も黙っておれ!!」
スパーン。とレヴィが叩かれた。
ちなみにアミタはディアーチェが放り投げたスプーンの代わりを取りにいっていた。

「すまんかったな。帰りが遅れて」
はやてとアミタが帰った後(はやては半ば強制的に)ユーリの部屋にて、ベッドで横になる彼女にディアーチェはそう言った。
「いいんですよ。別に」
「いや、あの小鴉の言う通り。王たる者が誓いを破ってよいわけではなかったのだ。だから…」
顔を赤くしてそっぽ向くディアーチェ。
「ーー?」
「貴様の風邪が治るまで。とはいかんが、次の任務があるまで貴様のそばにいてやる」
「ーーはい」
「なにを顔を赤くしておる!もう寝ろ!寝付くまでいてやる」
「はい」
ディアーチェの言葉にユーリは嬉しそうに布団を顔まで被らせた。

「ーーっで、ユーリが寝付くまでいたら自分も寝てしまい。そのまま風邪をひいたと…」
「わー、王様。間抜け~」
「やかましい!はっくしょん!」
シュテルとレヴィに怒鳴るディアーチェ。
「すいませんディアーチェ」
その光景にユーリは申し訳なさそうにそう言った。
「でも、よかったじゃないですか。ユーリの風邪が治って」
「たぶんそれ、王様に風邪をうつしたからだと思うよ」
最後に様子を見に来たフローリアン姉妹がそう言う。
なお、風邪をひいたディアーチェを看病しになのは達などが騒動を起こすのだが、まあそれはまたの機会に。
「待てぇ!!今地の文が聞き捨てならん事をーーーー!!」
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